大阪大学 大型教育研究プロジェクト支援室 統括マネージャー・特任教授 池田雅夫 氏
よい研究成果を得るためには、目標の設定とアプローチの選択が重要であることは、だれもが認めることである。その目標は、何のために研究をするのかという目的により異なる。目的は研究者が置かれた状況や社会の要請によって異なるものであり、一般に多目的である。制御理論とその応用等に関する講演者の経験を例に採りながら、研究の極意に迫ってみたい。
京都大学 太田快人 氏
ネットワーク化された制御システムに関する制御理論への関心は近年高まっている。ネットワークを介することによって、送信される信号のビット数制約や量子化、信号の遅延、通信路における雑音や誤りの存在など、従来の制御理論では議論が少なかった問題に関して正面から取り組むようになってきたといえる。本講演では、ネットワークを情報理論的に取扱うことによって得た制御理論の新展開について論じる。伝送される信号の情報量の制約と達せられる制御性能の関係について詳しく述べるほか、情報理論と制御理論が接することによって生み出された最近の研究についても概観する。
九州工業大学 瀬部昇 氏
オプティカルフローとは画像中の対象物の動きを表すベクトル量のことであり,その推定は動画像に基づく物体の運動計測の基本である.オプティカルフローの推定法の一つに勾配法がある.画像の輝度が移動後も保存されると仮定し,その保存則を表現したオプティカルフロー偏微分方程式をもとにオプティカルフローを推定する.本講演では,オプティカルフロー偏微分方程式を動的システムと見なし,動的システムに対する非線形状態推定器を構成することによってオプティカルフローを推定する試みを紹介する.この手法では空間勾配の計算を回避し数値計算上頑健な推定が可能となる.さらにオプティカルフローだけでなくその空間勾配(画像の回転・拡大の情報)を同時に推定可能となる.
京都大学 西田豊明 氏
他者との関わりの中で知的に行動し,集合知を作り出していくために必要となる社会知の理解と合成をめざした社会知デザインの研究の枠組みと動向について概説したのち,視線や身振りなどの非言語的なコミュニケーション手段を使った社会的インタラクションに参加する能力を持つ社会的エージェントを実現するための方法論に焦点をあてて,社会的インタラクションの認識と時系列マイニングによる行動原理の獲得手法を中心に解説する.
早稲田大学 平澤宏太郎 氏,間普真吾 氏
筆者らは九州大学に在籍していた2000年頃から遺伝的アルゴリズム,遺伝的プログラミングの拡張として有向グラフ構造を進化させる遺伝的ネットワークプログラミング(Genetic Network Programming, GNP)の研究を行ってきた.GNPは処理ノードと判定ノードと呼ばれる基本構成単位を必要に応じてグラフ構造状に連結させることで,複雑なプログラムをコンパクトな構造で表現できる.さらに,強化学習との融合に関する研究等も行い主に動的な環境でよい性能を示すことを明らかにしてきた.2003年に早稲田大学に移籍した後,有向グラフ構造を効率的に利用したデータマイニングアルゴリズムを提案するなどアーキテクチャの拡張に関する研究や,エレベータ群管理システム,株式売買モデル,都市交通流予測モデル,不正アクセス検知システムなどに関する研究を行っている.本講演では,これまでのGNPの研究の軌跡と今後の展開について,現在進行中のプロジェクトなどと共に紹介する予定である.
Kyungpook National University Minho Lee 氏
Intelligent cognitive systems with knowledge clustering and emotion understanding remain a high priority research topic, for which the learning techniques of neural networks are used to achieve optimal performance. In this talk, I present a new framework for human augmented cognition based on implementing a "visualizing earphone" and "hearing glass" systems. The visualizing earphone using two cameras and a headphone set in a glass interprets both human's intention and outward visual surroundings, and translates visual information into an audio signal so that the limited capacity of human cognition such as memory, inference and decision can be expanded. The hearing glass using two microphones and a tiny display monitor unit in a glass can transform audio signals into image and video information, which also helps human cognition in complex environment. In order to develop such a human augmented cognition system, we are developing an incremental feature extraction, selection and integration algorithms, hierarchical object categorization and face recognition systems in real time. Furthermore, we also consider higher level human cognitive process including autonomous emotion understanding and multiple intention recognition. Experimental results with real data have demonstrated the validity of the proposed approach.
京都大学 山下信雄 氏
本講演では,大規模な凸計画問題に対する勾配法の最近の研究動向を数理計画法の立場から紹介する.最急降下法に代表される勾配法は,高々1次収束しかしないため,内点法などのニュートン型の手法に比べて良くないとされてきた.しかし,近年,統計や機械学習に現れる大規模な凸計画問題を解く手法として,勾配法が再び注目を集めている.これは,そのような応用問題では高精度な解が要求されないため,勾配法の方がより速く所望の解を求めることができるからである.本講演では,そのような応用に適した勾配法(Mirror Descent 法,Optimal 法,Exponentiated Gradient 法, etc)とその収束性について,いくつかの事例を交えて紹介する.
大阪大学 加藤直三 氏
アクアバイオメカニズムとは,水棲動物の運動と推進に関わる生体外部流れと推進原理,運動機構,行動形態,感覚機構などを指します.これの海洋工学の分野への応用について,遊泳や歩行を行う水中ロボットを事例に,アクアバイオメカニズムがどのような観点から,どのように水中ロボットに生かされるのか,お話します.
理化学研究所 下田真吾 氏
自然環境に生きる生物は,日々変化する環境の中でその時々に応じた適切な行動を取っている.それらの行動は「生存」という極めて抽象的な目標の基で,実際の環境と相互作用することで創発されている.我々はこのような生物の行動獲得法をTacit learningと名付け,生物制御原理に基づいた制御器を36DOFヒューマノイドロボットに実装した.その結果,歩行に関する僅かな知識を基にした反射的な運動から,環境の相互作用を利用して行動を修正することで,効率的かつロバストな歩容を生成可能であることを実証した.
京都大学 岡部寿男 氏
京都大学では、神戸大学、大和ハウス工業(株)、(株)エネゲート、(株)トランス・ニュー・テクノロジーと共同で、「エネルギーの情報化」のコンセプトに基づく研究開発を、情報通信研究機構の委託研究として平成20年度より5年間の予定で進めている。本研究では、家庭で消費される電力に対して、情報通信技術(ICT)を利用して、生活者の利便を損なわず、かつ生活者が意識することなく、確実に消費電力の削減を達成する技術を確立することを目指している。その実現のための鍵となる技術がエネルギー・オンデマンド(Energy on Demand)である。従来の家庭内の電力ネットワークでは、電力消費機器は、コンセントに接続することで必要なだけの電力の供給を受けることができたのに対し、エネルギー・オンデマンドの電力ネットワークでは、ネットワークがエネルギーの需要予測と供給予測を行い、消費機器からの電力要求に優先度をつけて、最適割り当てを行う。さらに、分散電源に対して、家庭内で電力を由来別に配送する電力のカラーリングを実現することで、機器が要求する電力の品質(Quality of Energy)に合わせた電源と消費機器との最適マッチングを行う。本講演では、本プロジェクトの考え方と2年間の成果の概要について紹介する。
立命館大学 谷泰弘 氏
国家プロジェクトでガラスの鏡面研磨に使用される酸化セリウム(レアアースの一つ)の使用量削減技術および代替技術に関して検討を行っている。プロジェクトにおいては、(1)複合砥粒の開発、(2)複合粒子研磨法の適用、(3)研磨パッドの高機能化、(4)プロセス技術の開発の4テーマを遂行している。特に、有機微粒子をコアとしその表層に酸化物砥粒を付着させたコアシェル構造の複合砥粒は、30%の酸化セリウムの使用量削減と50%程度の研磨能率の向上を実現し、またエポキシ樹脂研磨パッドは2倍以上の研磨能率の向上とジルコニア砥粒での代替を可能としている。これらの技術の詳細および加工条件依存性について説明する。
森精機製作所 大岩一彦 氏
近年、部品加工、金型加工分野において形状の複雑化、高付加価値化が進み、 高速・高精度加工と作業性の良さを両立させた5軸制御加工機(5軸マシニング センタ・複合加工機など)が求められている。 また、並行して3D-CAD/CAMも 同時に発展を続けて来た。このような背景の中、リバースエンジニアリングを 利用した造形加工も従来の機械部品加工市場のみでなく異業種よりも注目を浴 びて来ている。(株)森精機製作所においても昨年度に【微細加工研究会】を発足 しテーマのひとつとして造形加工に取り組んで来た。ここでは、加工事例を元 に市場の要求及び造形加工技術への取り組みについて紹介する。
オーガナイザ: 山口大学 若佐裕治 氏
オーガナイザ: 三菱電機 藤本堅太 氏,オムロン 喜多総一郎 氏
オーガナイザ: 近畿大学 中迫昇 氏
オーガナイザ: 近畿大学 中迫昇 氏,広島大学 辻敏夫 氏
オーガナイザ: 名古屋大学 藤本健治 氏
オーガナイザ: 徳島大学 宇野剛史 氏,関西大学 尹禮分 氏
オーガナイザ: 京都大学 林和則 氏
オーガナイザ: 弘前大学 岩谷靖 氏
オーガナイザ: 神戸大学 浦久保孝光 氏
オーガナイザ: パナソニック電工 西山高史 氏
オーガナイザ: 金沢大学 山本茂、金子修 氏